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2019年6月定例会 照喜納 弘志 一般質問詳細

1. 住みやすいまちづくりについて
1) AIを活用した新交通システムの導入について
民間路線バス網を補完する交通システムとして、コミュニティバスと乗合タクシーの他に、今年度よりは介護事業者の車両の空き時間を活用した移動手段の実証実験も始まり、交通空白地区、交通不便地区を埋める施策が行われています。
しかし、免許を自主返納した高齢者や、障がい者などの交通弱者が気軽に区役所や病院を行き来するには、さらなる交通網の整備が必要となり、全市民のニーズに応えて、最適なルートを確立するためには、莫大な時間、費用、労力が必要になります。その意味で、既存交通網からの距離で設定された交通空白地区や不便地区を埋めるだけでは、本当に市民に必要な移動手段を確保することは困難を極めることは想像に難くありません。
本当に住みやすいまちづくりを実現するため、労力のかかる複雑な計算はAIに任せて、利用者の要求に応じた最適なルートを演算して配車することができるデマンド型の交通システムを導入してはどうでしょうか。海外では欧米を中心にすでに実用化されている技術で、国内でも、NTTドコモが2017年3月から実証実験を行い、本年4月から商用提供を開始しています。
また、このようなデマンド型の交通システムを導入した上で、既存の多様な交通手段を共存させるために、AI技術を活用して、最適な交通手段を選択することができるMaaS (Mobility as a Service) の実用化も提案したいと思います。
8日(土)「まるまるひがしにほん」で行われた記者会見において、清水市長を会長とするMaaS協議会が設立され、本市と草加市、越谷市、八潮市、三郷市、吉川市、松伏町の埼玉県東部の6市1町が連携をして広域的な新たなモビリティサービスの導入を目指すことが発表されました。そして、国内で初の取り組みとなるMaaSのレベル4にあたるP-MaaS (Public MaaS) を目指すとされたことは、さいたま市民として誇らしく思いました。どうか、全国のロールモデルとなれるよう、早期の導入を求めます。
このようなAIを活用した交通システムは、交通網の効率化以外に、渋滞緩和、排ガス抑制、高齢者の外出促進など、副次的な効果も期待されます。国内外で本格化してきたデマンド型交通システムとMaaSの導入に向けた、本市における今後の取り組みについて、見解をお伺いいたします。


2) 公共施設のバリアフリーとエレベーター設置計画について
住みやすいまちづくりを目指して、もう一点、バリアフリーについて質問いたします。本市においては、平成26年3月に「さいたま市バリアフリー基本構想」が作成され、現在まで重点整備地区、推進地区を中心にバリアフリー化が進められ、住みやすいまちランキングのトップ10に選ばれるまでになったことは高く評価します。しかし、実際に車いす利用者の視点から見れば、公園入口の小さな溝や、歩道の凹凸や傾斜、通りにくいスロープなど、まだまだ改善すべき点は多く残されています。バリアフリーの受益者である車いす利用者や視覚障がい者の方たちの視点に立って、こうした見えにくい課題の解決に真摯に向き合っていくべきであると考えます。
そこで今回は、車いすを利用する高齢者からのご要望が多い公共施設のエレベーター設置について質問させていただきます。
平成29年に、エレベーターが設置されていない市内の公民館43館に対して、設置可能性調査を実施し、16館について設置可能であるとの調査結果が得られました。中央区の大戸公民館もこの16館の中に入っていると聞いております。一方で、当時設置が不可能とされた公民館27館においては、今後一切エレベーターを設置する可能性は残されていないのでしょうか。例えば、小規模建築物用の小型エレベーターや、車いすに対応した階段昇降機などの検討はできないでしょうか?今後の公民館のエレベーター設置の方針について見解をお聞かせください。


2. 子育て政策について
1) 0歳から2歳児の幼児教育の無償化の範囲拡大について
本年10月より始まる幼児教育の無償化は、子どもの教育は幼児から始まっているという考え方のもと、全ての市民に平等に幼児教育を提供することが理想であります。しかしながら、0歳から2歳児においては、住民税非課税世帯のみを対象としてスタートすることになっております。これまで本市は「子育て楽しいさいたま市」を標ぼうし様々な子育て支援政策をおこなってまいりましたが、これからも、全国に先駆けた取り組みで、「さらに子育てが楽しいさいたま市」にしていくことが重要と考えます。例えば、本市の多子世帯利用者負担額軽減事業によれば、認可保育所に通う第3子は、第1子の卒園に関係なく無償になっており、かなり先進的な事例といえますが、10月以降は、さらなる軽減事業として、これを第2子まで拡充してはどうでしょうか。
また、給食費・おやつ代など保育料以外にかかる費用負担も無視できません。本市独自の支援策として、就学前児童を対象にした幼児教育に使用目的を限定したクーポンを配布する「幼児教育バウチャー制度」を作り、保育料をはじめとして、保育所で行っている各種教室の受講料、おやつ代、給食費、延長保育料などに使えるようにしてはどうでしょうか。見解を伺います。

2) 「待機児童ゼロ」への取り組みについて
幼児教育の無償化により増加する保育ニーズに対応するため、待機児童ゼロへの取り組みは無償化と同時に進めなければなりません。本市における待機児童数は、本年4月1日現在で393人と、昨年より78人増加しています。共働き世帯が増えたことや、さいたま市が子育てしやすいまちということで転入してきた子育て世帯が増えたことなどが原因と考えられますが、いずれにしても現状は、保育ニーズに十分応えられておりません。さらに幼児教育無償化を機会に、やっぱり子どもを預けて仕事をしたいという人がこれまでよりも多く出てくることも容易に推測されます。そうした子どもたちの受け入れ先を早急に拡充して確保しなければなりません。
しかしながら、本市においては、保育の質確保の観点から、保育園の設置要件について、国の基準より厳しく設定されており、保育所の設置が進んでおりません。これでは、さいたま市が本気で待機児童ゼロに取り組んでいるとは見えないでしょう。今後の保育ニーズの増加に応えるため、少なくとも保育ニーズの高い重点整備地域においては、この本市独自の設置基準を緩和して国基準に合わせるべきではないでしょうか。特に、面積基準や園庭設置にかかる駅からの距離基準については、本市独自の基準を緩和すべきだと考えます。さらに基準緩和で定員が増えたことによって、同時に保育士や看護士の加配も必要になる場合には、それらの確保のための助成制度も拡充すべきと考えますが、見解をお聞かせください。 
3) 母子手帳アプリの導入について
母子手帳は子どもの成長記録だけでなく、育児に関する行政の支援情報や、予防接種の管理などを一冊で行うことができ、母親にとって手放すことのできない重要な手帳です。しかし、最近は母子手帳の内容をスマホに記録できる母子手帳アプリの利用者が増えております。確かに、母子手帳がアプリになっていると、いつでもどこでも閲覧できますし、通院時にも忘れることはありません。また、通知機能を使えば、予防接種のリマインダーとしても使えます。こうしたアプリがいくつかある中で、総務省の「PHR (Personal Health Record) 利活用研究事業」の母子保健関連の分野を委託されているエムティーアイが提供する「母子モ」の利用者が急速に増えています。「母子モ」は母子手帳の省令様式に定められた妊娠中の健康記録、子どもの成長記録や予防接種管理などの母子手帳機能に加え、月額5万円で業務委託契約を結んだ自治体から子育て支援情報を配信する地域子育て情報機能があります。本市でもすでに同アプリを2,000人以上の市民がダウンロードしております。その方々にとって、同アプリと連携して行政からの情報も届くようになれば喜ばれることは間違いありません。また、希望する人には、現在行われている郵送による通知をアプリでの情報受信に切り替えれば、コスト削減にもなります。妊娠、出産、子育てを切れ目なくサポートするために始まった日本版ネウボラともいうべき妊娠・出産包括支援センターの事業とも、その方向性は同じくしていると思います。以上の観点から、母子手帳をお渡しする際に、母子モを含めたいくつかの子育て支援アプリを紹介し、スマホに慣れたお母さんに安心感を与え、行政からもアプリへの子育て支援情報を配信するよう提案いたします。見解をお聞かせください。

4) 新生児聴覚検査の助成について
生まれつき聴覚に異常があり、適切な支援が必要な新生児は500人から1000人に一人いると言われています。聴覚の異常が新生児の間に発見できれば、専門家の適切な支援を受け、言葉やコミュニケーション能力の発達を促すことができます。費用は3000円から1万円程度で、本市においては全額自己負担となっています。2016年に厚生労働省が全国の自治体に公費助成を図るように通知し、2014年時点で6.3%の自治体しか助成制度がありませんでしたが、今年に入って東京都や大阪市、福岡市が導入するなど、今年度中に43%まで増える見通しです。埼玉県内では越生町や久喜市ですでに導入されています。本市でも、子どもたちを守るため、いち早く新生児聴覚検査の公費助成を導入し、受診率を高めるべきであると思いますが、見解をお聞かせ願います。


3. 高品質経営の推進について
1) 複式簿記導入の効果について
本市においては「高品質経営プログラム」と題して、民間参入による効率化や、事務作業の電子化など、様々な改革が進められており、素晴らしいと思います。今後も他市の模範となる先進的な公経営の推進をお願いいたします。
その中で私が特に申し上げたいのは、「健全な財政運営の維持に向けた歳出改革」のために、事業評価を適正に行い、評価結果への説明責任を果たすという点であります。その足掛かりとなるのは、平成28年度決算から始まった総務省主導による「統一的な基準による地方公会計マニュアル」を適切に運用することだと思います。同マニュアルにより、自治体会計に複式簿記の手法を取り入れ、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書といった財務諸表と固定資産台帳が作成されております。これにより、自治体の資産であるストック情報が管理され、行政サービスの利用者一人当たりの行政コストが見えるようになり、適正な事業評価に活かせるものと期待いたします。また、PPPやPFIといった民間参入を促す際の判断材料としても活用できます。
まだ始まったばかりの統一的な基準による地方公会計制度ではありますが、全国に先駆けて複式簿記を採用した東京都では、財務諸表の活用で総額1兆円もの隠れ借金が発見され、解消されました。本市においても、大変にご苦労されて財務諸表と固定資産台帳を作成されたことと思いますが、それによって、どれほどの効果が得られたか、お伺いします。また、これを事業評価に活かすためには、行政コストが適正かどうかの基準がなければ、評価のしようがありません。行政コストの適正基準の考え方について、見解をお聞かせください。


4. 文化・芸術振興によるさいたま市のまちづくりについて
1) まちピアノ設置について
本市は平成24年に「さいたま市文化芸術都市創造条例」を施行し、文化芸術活動の促進により、地域の活性化を図ってきました。しかし、さいたま市民の意識調査では、さいたま市を「文化的なまち・芸術のまち」とイメージする市民の割合は、平成30年度の調査で14.1%と25年度の15.0%よりやや下がっています。さいたまスーパーアリーナや、芸術劇場を有するさいたま市としては、その潜在力を活かし切れていないように感じます。そこで、本年10月12日に予定している中央区の「アートフェスティバル」を機会として、その前後の期間で試験的に区内各地にピアノを設置し、市民の誰もがピアノを弾くことのできる「まちピアノ」の実施を提案したいと思います。
こうした取り組みは、2008年にイギリスのアーティストが「Play Me, I’m Yours」と題して始め、世界中で広がりを見せています。NHKのBS1でも「空港ピアノ・駅ピアノ」という15分番組が放送され、話題になっています。本市においては、芝浦工業大学の学生が授業の一環として、東大宮のハレノテラスで今月8日9日の二日間に渡って行われたのが、初めてだと思います。パネルをご覧下さい。私も日曜日の午後にその様子を見に行き写真を撮ってまいりました。子どもたちが喜んで弾いています。雨にも関わらずじっと見ている子どももいます。ピアノをきっかけとした人と人との交流が生まれている様子がうかがえます。これこそ、さいたま市が標榜する「さいたま市文化芸術都市創造条例」の目的とするところと思いますが、いかがでしょうか?
まずアートフェスティバルを機会に、一つの社会実験として、中央区の街角に置き、この結果を元に、来年3月に予定されているさいたま国際芸術祭で、さいたま市全体の取り組みに広げてはいかがでしょうか。市民の皆様に喜んでいただけるのであれば、駅や区役所、病院など常設の検討も価値があると思います。見解をお聞かせください。


5. 教育行政について
1) チャレンジスクールの充実について
本市の教育行政について、本年2月の細田教育長の教育行政方針説明にもあった通り、さいたま市の子どもたちは、成績面で全国トップクラスであるというだけでなく、自己肯定感や自尊意識、規範意識、社会への興味などで、肯定的な回答を示すなど、さいたま市は子どもたちの健全育成の模範になっています。私自身も、子どもの健全育成には地域との関りが重要であると考え、ボランティアとして地元小学校のチャレンジスクールに参加し、積極的に子どもたちと関わってきました。一方で、年々チャレンジスクールに参加する児童が減っており、運営スタッフも不足して、存続が難しくなってきている学校もあります。子どもの健全育成のために、チャレンジスクールの持続的発展のために、参加児童の増加、スタッフの充実に関する方策について見解をお聞かせください。

2) 「2020教育改革」について
「社会の行き詰まりの根源は人材の欠乏にある」とはある教育者の言葉です。さいたま市に育ち、学んだ子どもたちから、これからの社会を開く人材に、また、さいたま市から世界へ飛び立っていかれる人材を育成するため、教育改革は持続的に取り組まなくてはならないテーマであります。イエナプランやドルトンプランなど、欧米の教育メソッドを取り入れた学校が開設されるなど、全国的にも様々な取り組みが始まっています。国もアクティブ・ラーニングを取り入れた「2020教育改革」をスタートさせ、学校教育の現場はその対応に頭を悩ませています。先日、私は大宮国際中等教育学校の開校記念式典に参加させていただきました。そこでは、生徒が世界に目を開き、社会の問題を主体的に捉え、自分の頭で考える教育が行われているように感じました。「2020教育改革」の先頭を行く取り組みだと評価いたします。
そこには、さいたま市内のその他の全公立中学で「2020教育改革」を具現化するためのヒントが隠されているように思われてなりません。それは、子どもの目を世界に向けさせる、希望あふれる未来に向けさせるということであります。いくら学びの方法が変わった、英語教育を取り入れたと言っても、子どもにその気がなくては絵に描いた餅です。そう考えた時に、教師の役割は、単なる知識の伝達ではなく、生徒との人間的な触れ合いを通して、子どもの目をどこに向けさせるか、まさに子どもの人格価値を創造することにあるのではないかと思います。「使命を自覚した時、才能の芽は急速に伸びる」私の恩師の言葉であります。教育長の提唱する未来を拓くさいたま教育 “Plan the Next” の3つのG (Grit, Growth, Global) は大宮国際中等教育学校において具現化されるものと信じますが、「2020教育改革」の先頭を走るさいたま教育構築のために、その成果を市内全ての公立中学へと広げることが求められていると思いますが、そういう具体的なプランはございますでしょうか?見解をお伺いします。

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